カテゴリー「連絡運輸と開示請求」の10件の記事

2024年3月26日 (火)

2024年03月16日現行の基準規程を公開しました。

 乗継割引の廃止等にかかる2024年03月16日改定分を公開しています。

 こちらからご覧ください。

 基準規程の部屋

 

 

 

 

2024年3月10日 (日)

2024年03月16日現行の基準規程は準備中です。

来週3月16日に北陸新幹線の敦賀開業をはじめとしたダイヤ改正が行なわれることは周知の事実ですが、規則面では、乗継割引の廃止など、旅客営業に関する規程類が大きく改定されます。

例によって福岡市役所に対して、旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程を開示請求しています。

2月中旬ごろに一度請求していますが、改定があることはJR九州に確認が取れているものの、まだ文書が来ていない、ということでいったん取り下げ、昨日再度請求をかけています。
通常であれば1週間程度で手元に送られてくるので、公開まで今しばらくお待ちください。

なお、取り下げの連絡をする際、市役所の担当の方にうかがいましたが、新旧対照表のようなものはないそうです。改定後の本文のみとのことでした。

基準規程の部屋 (amazonaws.com)

PS.Google検索等で、「旅客連絡運輸取扱基準規程」と検索すると、当ブログの2014年09月01日基準のPDFが一番上に出てくるとの指摘がありました。最新版が載っているのは上記のHPですので、お間違えのないようご留意ください。

 

 

 

2024年1月15日 (月)

2023年10月1日現行の基準規程を公開しました。

年始に福岡市役所(福岡市交通事業管理者)から、JR九州の2023年10月01日現行の基準規程が届きました。

ホームページにアップロードしていますので、

こちら(基準規程の部屋)

からご覧ください。

なお、8月28日現行の基準規程との差異は、まだ調べていません。福岡市に新旧対照表のようなものがないか開示請求してみる予定ですが、気になる方はご自身で差分比較をお願いします。

 

 

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2023年12月30日 (土)

基準規程のHPを作りました。

みなさまお久しぶりです。
最近、開示請求の話しか書いていませんが、ネタが無いわけではないんです…

福岡市交通局に情報公開請求することにより、旅客営業取扱基準規程と旅客連絡運輸取扱基準規程の現行版を入手する手法を確立したわけですが、規程類は随時改定されているので、その変遷と、今の現行版を追いかけるには、ブログでは限界があると思ったので、

基準規程の部屋」という簡易なホームページを作りました。

今のところ当方で公開しているものは、2023年8月28日現行版ですが、つい先日、福岡市交通事業管理者に対して情報公開請求を行なったところ、10月1日現行版というものがあることがわかりました。

姪浜駅に保管されている規程類が開示されているようですが、その場合、開示決定者は、福岡市交通事業管理者になるようです。交通局本局にある資料の開示決定は福岡市長らしいです。

ちなみに、JR東日本の旅客営業規則改訂履歴では、12月23日付の改定も行なわれていますが、基準規程の改定はないようです。
12月23日現行版も請求したところ、当該日付での改正は行われない、ということで不存在決定通知が来ていました。

10月1日現行版は、郵送されてくるのを待っている状態です。


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2023年11月 5日 (日)

連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(6)

長らく放置してしまいましたが、ご無沙汰しております。

 東京都交通局に対する開示請求は、結論から言うと、あまり芳しくない結果に終わっています。

開示された文書

・旅客連絡運輸及び旅客営業取扱基準規程別表

・連絡運輸管理規程(ただし東京都交通局分に限る)

不存在決定の出された文書

・旅客営業取扱基準規程

・旅客連絡運輸取扱基準規程のうち、2014年9月1日以降の改定がわかるもの(新旧対照表等)

 

 交通局の規程において、旅客連絡運輸取扱基準規程を準用し、それが更に多く準用する旅客営業取扱基準規程を保有していない、というのは前回書いた通り、鉄道営業法3条の関係で問題ありと思料しますが、これをやるとかなり時間がかかるので、とりあえず次の一手を考えることにします。

 ・・・が、そろそろ請求先を思いつかなくなっていました。そのとき、TwitterのDMである方から、東京都交通局は、たとえば馬喰横山駅で、JRの精算業務の委託を受けているから、その駅の事務室であれば、JRの規程類もあるのでは?という提案を受けました。

 私にはその視点はなかったので、こういう方向で考えてみます。

 委託、というキーワードから、精算業務を行なっているところよりも、むしろ発売窓口、要するに自治体が乗車券類の発売を受託している駅、つまり簡易委託駅の方が確度が高いのではないかと思いました。まずその方向で考えてみることにしました。

 簡易委託駅は全国に散らばっていますが、POS窓口や補充券発売を行なっている駅よりもマルスを置いて、みどりの窓口あり、と謳っている駅で、かつ自治体受託という駅があれば、そこを狙ってみます。ばっと思いついたのは小浜線の上中駅です。たしか小浜市が受託していたような…と思ったので、とりあえずJR西日本にこのあたりのことを質問してみます。若狭本郷もそうですが、こちらは町なので、町よりも市の方が開示請求の取扱件数も多いだろうということで、市の小浜にしました。

 回答は、そもそも小浜市の受託ではない、かつ、連絡乗車券は発売できない、というものでした。前者はともかくとして、連絡乗車券は、みどりの窓口を標榜していても、簡易委託駅では発売していない、ということであれば、やるだけ無駄だと思ったので、この線からは撤退です。

 次、POS窓口の簡易委託駅を考えます。ちょうど奥羽本線の十文字駅が、JRの要員撤収に伴い、横手市が受託したという新聞記事を見たので、横手市に開示請求をかけます。

 駒ヶ根市に対する開示請求によって、規則類が受託者たる市に「貸与又は交付」されていそうなことはわかったので、JR東日本との契約書に加えて、貸与又は交付された規則類の一覧、を請求しました。

 結果、「旅客営業規則等運送約款」「十文字駅用簡易委託駅発券POS勉強会資料」が貸与又は交付されていることがわかりました。

 もう1回開示請求をかけます。「等約款」となっていたので、細かく指定しました。ついでもPOSの勉強会資料も面白そうなので請求します。

請求したのは次の通りです。

・旅客営業規則等運送約款

・旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程、旅客連絡運輸規則及び旅客連絡運輸取扱基準規程別表

・十文字駅用簡易委託駅発券POS勉強会資料

 

すると、不存在決定が来ました。不存在は想定外でしたが、理由が附記されており、いずれも、JR東日本の文書であって、あくまで市には「貸与」されたにすぎず、市の公文書に当たらないため、となっていました。

 

 貸与された文書であっても、市が業務に使用していて、市が保管しているものは公文書にあたるだろう、と考えたので、審査請求を出すことにします。

 ただし、貸与された文書が、情報公開請求の対象となる公文書に当たるかどうかは、少なくとも条例には書いてありません。最高裁判例も探しましたが、明確に述べたものはないです。総務省の諮問機関の答申にはそれらしきものを見つけましたが、貸与された文書についての判断ではなかったので、参考にはなりましたが、いずれにせよ、この論点について真正面から判断された例は過去なさそうです。

 それは審査請求で述べるとして、期限の3か月以内に審査請求書を郵送しました。

 すると、しばらくして、担当の方から電話がかかってきました。 審査請求を受けて、請求文書が本当に存在するか念入りに調べたところ、そもそも旅客連絡運輸取扱基準規程と、旅客連絡運輸規則及び旅客連絡運輸取扱基準規程別表は貸与されてすらいないことがわかったそうです。

よって、前回の不存在決定を一度取り消して再度決定を出すということでした。市の見解としては貸与された文書は市の公文書ではない、ということなので、不存在決定ですが、という内容です。

 貸与された文書が開示請求対象になるかは、また論理構成を考えて、再度審査請求を出して先に進むか考えるとして、とりあえず並行して、DMで頂いた指摘に戻ってみます。

すなわち、公営交通の駅において、JRの精算業務を受託している箇所に保管されているこれらの規程類を開示請求する方法です。

 東京都交通局は、一度、存在しない、という回答を得ている(おそらく各駅の事務室まで探したわけではなく、本局の事務所にあるかどうかしか探してないだろう、とは思いましたが…)ので、福岡市交通局の姪浜駅に焦点を定めました。

 貸与、の論点を回避するため、一応福岡市の情報公開請求に対する処理基準を見ることにします。行政手続条例によって、請求に対する処分を行なう際には、その処理基準を定めて公開することが義務付けられています。行政法の細かい話になるのでこれ以上は立ち入りません。

「福岡市情報公開条例の解釈及び運用」という文書が市のHPで公開されていました。

該当箇所を見てみます。

第2条第2号関係(公文書) 

【運用】

1 イ ①

一般的には、福岡市公文書の管理に関する規則(平成14年福岡市規則第82号)の規定等により管理・保存されている文書等が該当するが、共用のファイリングキャビネットや書庫等に保存されているものは、当該規則等の規定によらないものであっても、「組織において利用可能な状態で保有されているもの」とみなす。

 

 横手市の見解としては、公文書管理規則に言うところの公文書と情報公開請求における公文書は同一であって、前者には貸与文書は含まれない(これはいろいろ調べましたがどうも一般にそう解釈されているようです。私も異論はありません)ので、情報公開請求においても貸与文書は、公文書にあたらないから対象外ということでした。一方福岡市の運用基準ではこれが緩和されていて、共用のキャビネや書庫にあるものは一切合切、とりあえず情報公開請求の対象となる公文書をみなす、としているので、これはいけそうです。「みなす」とは反証を許さないという意味ですから、キャビネにあるのに公文書ではない、と主張することは許されません。仮に主張したとしても審査請求か取消訴訟で勝てます。

 

 では、「姪浜駅事務室もしくは交通局本局において保管されている、九州旅客鉄道株式会社が作成した、旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程(別表含む)」で開示請求をかけてみます。決定通知を出すまでの期間は7日だそうです(めちゃくちゃ早いです)

 

1週間ほどで、決定が郵送されてきました。全部開示です。支払いを済ませて(ネットで完結しました。福岡市は進んでいます)送られてきたPDFを開けてみました。

すると、2023年8月28日現行と打たれた、旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程のファイルがありました。

JR各社があれだけ、内規です、見せられません、と主張してきた基準規程の最新版を遂に手に入れました。ファイルのリンクを貼っておきます。旅客営業取扱基準規程は60MBほどあるので、その点ご注意ください。(なお、ココログを離れます。容量の都合でアップロードできなかったので、AWSのサーバーを借りています)

旅客営業取扱基準規程

旅客連絡運輸取扱基準規程

内容を読むと、確かに釣銭に関する事項など、係員の取り扱いに関する条文も多くありますが、明らかに旅客営業規則を補完する内容の条文も多いです。これを内規だと主張するのはやはり無理があるとは思います。

 まあそれはいいです。
 定期的に福岡市交通局に開示請求をかけて、今後更新していく所存ですので、皆様のお役に立てれば幸いです。

 ただし、福岡市に対する情報公開請求によって、JR九州が作成した公式の規程だとは言え、JR九州が公式に公開しているものではありませんし、規則は当然改定されます。それを改定と同時に検知することは情報公開請求を介する以上不可能ですので、必ずしも一言一句最新版ではにことにご留意ください。この資料の利用に関して一切の責任は当然負いませんので、ご了承ください。


 で、連絡運輸の別表ですが、これは姪浜駅にも全社分はないようです。再度、別表に限定して開示請求をかけたところ、福岡市の担当の方から電話があり、姪浜駅も本局も探しましたが、福岡市交通局の分しかないが、それでもいいか、と聞かれました。こちらも受領しましたが、そもそも福岡市交通局とJR各社の連絡運輸範囲は、福岡市交通局の規程に明記されているので新情報は特にありませんでした。

連絡運輸別表は、今後も探していきますが、とりあえず基準規程の最新版を手に入れる方策が見つかったので、ある程度の成果が出ました。別表は、JR東海が窓口に設置している規程類の本に載っているらしい、という情報を得ているので、東海管内の簡易委託駅に焦点を合わせようとは思っていますが、まずは現地調査をしたいと思っています。これは少し時間がかかりそうです。

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2022年12月31日 (土)

連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(5)

ここまで考えてみて、諦めそうになりましたが、そういえば、社線の連絡運輸規則には、JRの連絡運輸規則を準用する旨を定めている例が結構あることを思い出しました。それとこの開示請求がどう関係しているかというと、鉄道営業法3条が間に入ります。

 詳しく解説します。

 まず、鉄道営業法3条は次の通り定めています。

 「運賃其ノ他ノ運送条件ハ関係停車場ニ公告シタル後ニ非サレハ之ヲ実施スルコトヲ得ス」

 

 鉄道営業法は文語体ですが、要するに、運送条件は、公告しなければならない、ことが定められています。明治時代にインターネットはありませんので、運送条件、つまり旅客営業規則の各種規則類は、駅において、少なくとも旅客が閲覧等を求めた際には開示しなけならない、もっと言うと、駅に掲示しておかなければならない、ということです。旅客営業規則の全文を貼り出すのは現実的ではありませんが、それを抜粋してわかりやすく書いたものが、どの駅にも掲示されています。

 この「運送条件」には当然ながら連絡運輸規則も含まれます。更にいうと、その細則である旅客連絡運輸取扱基準規程も、その中に、旅客営業に関する運送条件が書かれているのであれば、少なくともその部分は、運送条件に含まれます。

 したがって、そもそも基準規程は内規だから、というのは鉄道営業法3条に違反しているように前々から思っていますが、今のところ国土交通省鉄道局は問題視していないようです。国鉄時代からの慣例のようです。実際のところ、細則で定めるような細かいことまで公告の対象としなくてもよいだろう、という法解釈だと推測します。

 少し逸れましたが、連絡会社が、その規則において、JRの旅客連絡運輸規則を準用する、と定めている場合、当該連絡会社に対して、連絡運輸規則を閲覧したい、と申し出られたときに、準用しているJRの規則も見られなければ、運送条件を公告したことになりません。

 ということは、JRの連絡運輸規則類は、少なくとも準用規定を置いている連絡会社には周知されている可能性が高い、と考えました。

 

 そこで、公営交通の連絡運輸規則類を片っ端から見ていきました。すると、東京都交通局に面白い規定がありました。「東京都地下高速電車連絡運輸規程」です。全部で8条しかないですが、その第8条には「準用規程」とあります。全文引用します。

「この規程に定めのない事項については、東京都地下高速電車旅客営業規程(昭和三十五年交通局規程第十号。以下「旅客営業規程」という。)、東京都地下高速電車身体障害者旅客運賃割引規程(昭和三十五年交通局規程第十一号。以下「身体障害者割引規程」という。)及び東京都地下高速電車知的障害者旅客運賃割引規程(平成三年交通局規程第百十五号。以下「知的障害者割引規程」という。)の定めを、この規程、旅客営業規程、身体障害者割引規程及び知的障害者割引規程の定めのない事項については、東日本旅客鉄道株式会社が定める連絡運輸に関する規則及び規程の定めを準用する。」

 長いので必要な部分だけ抜き出すと、

「この規程、・・・の定めのない事項については、東日本旅客鉄道株式会社が定める連絡運輸に関する規則及び規程の定めを準用する。」となります。このうち、「東日本旅客鉄道株式会社が定める…【規程】」を準用する、の部分が最重要です。

 「規則」の部分は、旅客連絡運輸規則で、これは公開されているので、どっちでもいいですが、【規程】の方は、旅客連絡運輸取扱基準規程を指すものと考えられます。

 これは、基準規程を東京都交通局は保有しているのではないか、と先ほどの理論から考えました。

 そういうわけで、東京都交通局長に対して、開示請求をかけてみます。

 電子請求ができますので、ネットから開示請求書を提出して、数時間後に担当職員の方から電話がありました。早すぎます…

 その内容は、「請求対象は、JRの規則ですが、JRに対して請求をするのではなく、当局が保有する、JRの規則を、当局に対して請求する、という趣旨で間違いないか」というものでした。変な請求をしているのは間違いないですが、探してくれることになりました。

 2週間ほどして、期間の延長決定通知が来ました。東京都の情報公開条例では、請求から2週間以内に開示決定をすることになっていますが、その期間内に開示決定ができないときは、期間を延長できます。その通知です。延長期間は2か月でした。

 開示請求の対象は、都以外のものが作成したものであり、その者の意見を聞く必要がある、というのが理由でしたが、ここでわかったことが1つあります。

 それは、不開示ではなく、こういう理由で延長する、ということは、少なくとも東京都交通局は、JRの旅客連絡運輸取扱基準規程を保有している、ということです。やはり、配っているようです。

ちなみに請求対象とする文書として、「別表を含む」と明示してあります。この決定通知が来たのは、9月下旬でした。

 

 2か月後の11月中旬、私は旅行で、北海道の紋別市にいました。そこはどっちでもいいですが、東京都交通局の担当職員の方から電話がありました。

 「請求された文書の、開示決定が出ました。結論から言うと、全部開示なのですが、JR東日本に意見を聞いたところ、出さないでほしい、と言われておりまして、ただ、文書の内容を見ましたが、都の条例、その他の関係法令に照らしても、隠す理由が無い、ということで、全部開示になりました」

 東京都交通局、なかなかいい仕事をされています。JR東日本が反対意見を出しても、隠す理由がない、と全部開示にするのはさすがです。法令に則った正しい取り扱いをする、理想的な行政機関です。

「都の条例によって、反対意見が出された場合は、出した者、つまりJR東日本が、開示決定を取り消してほしい、と訴訟を起こす可能性がありますので、猶予期間が設けられておりまして、それが2週間なので、実際に文書をお渡しできるのは今から2週間後になります。」とのことでした。

 JR東日本からすれば、今まで「内規だから」と公開を断ってきた基準規程を、東京都交通局が開示しては困る、ということで反対意見を出したのだと思います。当然です。ただ取消訴訟までするかな、とは思いました。行政訴訟はそれなりに時間も手間もかかります。

 いずれにせよ、訴訟提起がなされれば、裁判所から東京都交通局に連絡がいき、そのまま請求人である私のところにも連絡が来るものと思いましたので、とりあえず待つことにします。

 2週間の期限が到来しても特になんの連絡もなかったので、仕事の合間を見て、半休を取り、都庁まで開示された資料を取りに行くことにしました。あらかじめデータでほしい、と申し出ていたので、CD1枚です。

 郵送された開示決定通知には、枚数として、「19枚」とあり、これは別表、赤表紙は含まれていないな、と直感しましたが、「東日本旅客鉄道株式会社が定め、東京都交通局が保有する旅客連絡運輸取扱基準」が開示文書として記載されていましたので、少なくとも本文はあると思いました。

「規程」の2文字が入っていないのが少し気になりましたが、とにかくCDを受け取ってきました。

 

 まずファイル名称が「47本営20140901旅客連絡運輸取扱基準規程」となっています。この時点で、少し古いな、と思いました。20140901の部分は恐らく、その当時のもの、ということでしょう。

内容を見ます。全部開示決定なので、黒塗りはありません。

 題目は「旅客連絡運輸取扱基準規程」です。あれだけ、内規です、と公開されていなかった、基準規程の連絡運輸版が、全文開示されました。

ちなみに、インターネットでこうして公開していますが、東京都情報公開条例に基づく全部開示決定により出てきた公文書に該当するので、誰が請求しても同じものが出てきます。つまり公開しても法的に何ら問題はありません。

 ここに東京都交通局から交付されたPDFを置いておきます。

47本営20140901旅客連絡運輸取扱基準規程.pdf

 ところで、先述した通り、まだ満足はできません。

・2014年9月1日現行のものと思われるので、少し古い。

・別表部分が載っていない

この2点です。古い、というのは、後ろのほうにある、幹事会社のJR北海道欄に、道南いさりび鉄道がないところ、北陸本線三セクもないところからもわかります。連絡運輸の基準規程は中を見ていると、旅客営業取扱基準規程が多々準用されているので、これも見たいです。上述した理論から、これも東京都交通局にあるのではないか、と思っています。

 

 そこで、12月25日に追加の開示請求書を提出しています。請求対象は次の4点です。

・旅客営業取扱基準規程
・旅客連絡運輸及び旅客営業取扱基準規程別表
・連絡運輸管理規程
・旅客連絡運輸取扱基準規程のうち、2014年9月1日以降の改定がわかるもの(新旧対照表等)

 これらが東京都交通局にあるか、あれば、今回と同様、JR東日本に反対されても、開示決定が出るでしょうし、出なければ、鉄道営業法3条を絡めた審査請求、取消訴訟などを要検討です。もちろん、東京都交通局には、これらの規則類はないかもしれません。

 年末に、まずは大きな第一歩です。東京都交通局からなんらかの通知が来れば、また連載企画を続けます。

 これまでの4回のリンクは次の通りです。

 連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(1)

 連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(2)

 連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(3)

 連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(4)

 

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連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(4)

 中部運輸局に対してかけた開示請求は失敗に終わったので、そもそも連絡運輸に関する届出にはどのようなものがあるのか、というところから考察をすることとしました。「e-gov文書管理」という政府のサイトがあり、官公庁の保有する公文書の一部が検索できます。

 運輸に関する届出、というところで、「令和2年度運輸に関する協定届出」と題する文書に、連絡運輸に関する届出が含まれていそうだ、ということがわかったので、この画面コピーを取って、保管先の東北運輸局に開示請求をかけてみました。何が出てくるかはさっぱりわかりませんが、保有文書として記載されているのだから、不存在、ということはあり得ません。

 しばらく経ってから、請求した文書が送られてきました。PDFデータが送られてくるとばかり思っていましたが、郵券と、必要書類を紙で送って、開示文書が、紙に印刷されて郵便で届きました。システムを使うより紙でやりとりした方が事務処理上楽なのでしょうね。

 さて、中身を見てみます。

 開示された文書はいくつかありましたが、そのうちの野岩鉄道と会津乗合自動車の分を見てみます。中身は特別企画乗車券に関するもので、一時限りの連絡運輸に関する届出でした。普段から連絡運輸を行なっていない会社と連携した企画乗車券を発売する際には、確かに届出が必要です。一時限りの連絡運輸であってもその都度届出が必要なので、そう簡単に他社と連携した特別企画乗車券は発売できそうにないな、ということがよくわかります。

 詳しい内容は、添付のPDFファイルをご覧ください。

東北運輸局開示文書1

 協定書の内容は、事業者が通常公表しておらず、公表することによって、当該事業者の正当な利益を害するおそれのあるもの、として当事者の名称と有効期間以外は黒塗りになっています。まあこれは仕方ないです。また最終頁の運賃設定についても、事業者ごとの割引率や取り分は黒塗りです。理由は協定書と同じです。これも頷けます。

 開示された文書は、これ以外にもあり、仙台市交通局とバス事業者の間で締結された協定以外は、全て特別企画乗車券に関する一時限りの連絡運輸に関する届出でした。仙台市交通局のは、ほぼ全部黒塗りで、一体これがなんなのか、全くなにもわかりませんでした。

 ここまで見てみて、一時限りの連絡運輸であっても都度届出をしているのであれば、普通連絡運輸に関しても、連絡運輸範囲を変更するごとに届出がされているのではないか、と推測しました。保存期間は5年間ということもわかりましたので、その期間に連絡運輸範囲を変更していることが確実にわかっている、肥薩おれんじ鉄道に照準を合わせ、今度は九州運輸局に対して、開示請求をかけてみます。肥薩おれんじ鉄道は、特急「36ぷらす3」の運行開始時に、通過連絡運輸を設定し、JR九州全駅に連絡運輸範囲を拡大しています。

 開示請求書を提出してしばらくして、担当係官の方から電話が入りました、この方は親切で、例えば、JR九州との連絡運輸で、JRだけが割引をしている場合、届出義務はJRにある、とか、協定書の内容は、当事者と有効期間以外黒塗りになります、そういう答申が出ていますので、とかいろいろ教えてくださいました。そのやり取りを踏まえて、開示請求書を補正してほしい、とのことで補正案まで作ってメールで送ってくださり、それに住所氏名等を書いて返信しました。

 これまたしばらくして、数十枚の開示文書が送られてきました。年度別にまとめてあり、とても仕事が丁寧な方でした。開示請求などというのは役所側にしてみれば負担でしかなく、運輸局であれば担当は総務課で、専属の担当係官がいるのかもしれませんが、いずれにしろ、黒塗りをしたり、結構な手間がかかるはずです。

 開示された文書は、そのうちスキャンしてもよいですが、全て特別企画乗車券に関する一時限りの連絡運輸の届出でした。きっぷオタクとして興味深いきっぷもあったので、内容は面白かったですが、いずれにしろ、普通乗車券の連絡運輸範囲を変更する旨の届出はありませんでした。

 ここまでやってみた結論としては、普通乗車券に関する連絡運輸範囲の変更、というのは届出義務がない、おそらく、連絡運輸を締結した最初のときに、自動更新条項があり、協定書の内容に、細かい連絡運輸範囲というのは含まれていないのだろう、というところです。鉄道会社か国土交通省鉄道局に法令解釈という観点から質問でもすればわかるのかもしれませんが、開示請求をして出てこない、ということは、都度の届出はされていません。

 よって、地方運輸局に対して開示請求をかけることで連絡運輸範囲を知ろう、という試みは失敗に終わりました。

 これで諦めたわけではないので、まだ続きます。今度は少し違う観点から開示請求を行ないます。開示請求の利点は、何人も見られる資料である、という点にありますので、あくまで開示請求という方法にはこだわります。意外なところから、意外なものが出てきましたので、それはまた次回にします。

 

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2022年12月 3日 (土)

連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(3)

 では、実際に運輸局に対して、開示請求をかけてみます。そもそも運輸局が連絡運輸範囲の改訂についてまでの届出を受けているのか、直近で、連絡運輸範囲の拡大がなされた(らしい)近鉄とJR東海に照準を合わせました。

 令和4年4月1日から、JR東海会社線内から近鉄への連絡運輸を取り扱う範囲が、JR東海全駅に拡大されたらしい、という話を聞きました。近鉄からJRへの連絡運輸となる場合は従来通りだそうです。

 ここでまず1点疑問に思ったのは、本件の場合、JR側の連絡運輸範囲を拡大したわけではなく、現場の実務上の取り扱いとして、全駅から取り扱うようになってだけなのでは?という点です。マルス端末上は、発券しようとする連絡乗車券が連絡運輸範囲に収まっているかの判定は行っておらず、定期的に誤発券の事例が挙がってきます。りんかい線通過連絡などが典型例です。このように社線運賃がマルスに登録されている区間であれば、規則上の整合性はさておき、実務上は発券できてしまうので、それならば、これまで誤扱いだったものを、正式に認めて、誤発券となる事例を減らそう、という意図は理解できます。とりあえず自社管内各駅から運賃登録のある近鉄線の駅まではすべて発売可、としておけば、誤発券となる事例は大幅に減らせます。

 近鉄側からの連絡運輸となる場合は、長距離の場合は、そもそもASAK端末が対応していないこともあるなど、誤発券となることが少ないことから据え置きとしたのだと思います。

 それはさておき、開示請求です。開示請求の宛先は、中部運輸局長となります。開示請求の手続きとしては、国土交通省所定の書式に、開示請求者の氏名住所連絡先を記入し、開示請求対象文書を特定するに足りる事項を書き、開示方法を選択した用紙を書くことから始まります。

 対象文書の特定として、次の通り書きました。

「東海旅客鉄道株式会社が、近畿日本鉄道株式会社と、鉄道事業法第18条に基づき締結した 、 連絡運輸に関する協定に係る届け出のうち、令和4年6月12日現在有効なものに関する一切の 文書。なおここでいう一切の文書とは、当該届出書本紙のみならず、それに付属する書面等を含む 。」
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 開示請求書を中部運輸局総務課に郵送してもいいですが、国土交通省は、電子申請ができます。e-govという専用サイトから提出します。初期登録を済ませて、開示請求者の情報を入力します。開示請求専用のページなので、ここに必要事項を入力するだけでいいと思っていたところ、どうも入力するのは、宛先と請求者の情報だけで、文書の特定などは、添付ファイルでするようです。これは想定外だったので、上の書面を別途作成しました。なかなか出来の悪いサイトです。紙による行政の事務をそのまま電子化したように見受けられます。デジタル庁には、このあたりも改善していただきたいな、と思いました。余談ですが、e-govのマイページには、「公文書」というボタンがあります。たぶん申請に対する行政庁の回答文書が見られるのだろうと思いますが、「公文書」という名前はなんとかならなかったのですかね。

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 話が逸れましたが、所定様式に必要事項を記入してPDF化したうで添付し、申請ボタンを押しました。郵送したり、開示請求手数料(300円/件)の印紙を購入したりする手間はないので、着実に行政の電子化は進んではいます。ちなみに手数料は後で電子納付することになります。

 開示請求は、以前別件で人事院に対してかけてことがありますが、数週間かかるので、気長に待ちます。

 忘れかけたころに、中部運輸局総務課の担当係官から電話がかかってきました。

 曰く、「対象となる文書がありませんでした」とのことです。要するに、不存在です。不存在の旨を記した文書が必要であれば、手数料300円を納めていただいて、発行しますが、この段階で取り下げれば手数料は不要です、とご親切に教示してくださったので、取り下げにしました。

 e-govから、取り下げ手続きをして、本件は終了です。

 本件は、上述した通り、連絡運輸に関する協定を変更したわけではなく、あくまでJR東海側の運用が変更になっただけなのか、あるいは、連絡運輸範囲を変更した場合でも都度届出が必要になるわけではないのか、そのいずれなのか判然としないので、失敗に終わりました。

 そこで、連絡運輸に関する届出には、一体どういうものがあるのかを、まず探って行くことにしました。無暗矢鱈と鉄道会社名を書いて全国の運輸局に開示請求をかけることも方法としてはあり得ますが、時間と労力がかかりすぎますし、運輸局の係官に多大な負担をかけるのは本意ではありません。文書の特定方法が悪かったのかもしれませんし、考察を進めて行くことにします。次回に続きます。

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2022年11月23日 (水)

連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(2)

 前回の最後で、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」といいます)に基づく開示請求について触れましたが、ここで、この開示請求について、詳しく見ていきます。もはや、きっぷのブログではなく、行政法の解説になっていますが、この連載の重要な部分なので、飛ばすわけにはいきません。

 情報公開法は、平成11年に制定された比較的新しい法律です。行政の透明化の一環で、それまで一部の地方自治体において、情報公開条例が個別で制定され、その保有する情報を公開する手続きが整備されている例はあるものの、国の行政機関が保有する情報を公開するための法律は整備されておらず、これを整備し、政府の活動を広く公開することを目的として制定されました。

 沿革はさておき、情報公開法の対象となる行政機関は、同法第2条第1項で規定されており、詳しく条文は引きませんが、要するに、一般社会通念上でいうところの、政府諸機関です。例えば、○○省、○○庁、その地方支部局がこれにあたります。今回は直接関係ありませんが、独立行政法人は、対象外で、別途独立行政法人の保有する情報の公開に関する法律で定められています。

 

 次に、公開の対象となる情報はなにかを見ていきます。ここは重要です。

 政府の保有する情報、といってもその大半は、文書です。第2条第2項で、「行政文書」と定義されています。条文の一部を引きます。

「「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(中略)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。」

 下線を引いた部分が重要です。職務上取得していれば、行政機関が作成した文書でなくとも、公開の対象となります。

 

 では、公開の対象となる文書を見たいときにはどうするか、というと、行政機関に対して、「開示請求」を行なうことになります。第3条において、開示請求権が定められ、「何人も」行政文書の開示を請求することができる、とされています。この「何人も」の部分も重要で、要するに、国民であろうが法人であろうが外国人であろうが、誰でも開示請求できる、という趣旨です。誰でも開示請求できるので、請求した結果出てきた文書を、例えばインターネットで公開したとしてもなんの問題もありません。請求して開示決定が出れば、誰でも見られるものですから。よく報道機関が、黒塗り文書が出てきました、といって行政を批判していますが、あれはこの開示請求を行なっているわけです。開示決定、という用語については後で説明します。

 開示請求の手続きは、そう難しいものではなく、手続き自体は第4条に書かれていますが、要するに、住所氏名と、請求した文書が特定できるような事項を紙に書いて、行政機関の長に提出するだけです。行政機関の長、というのは、例えば国土交通省本省であれば、国土交通大臣、地方支部局であれば、その部長局長、例えば、関東運輸局であれば、関東運輸局長、となります。

 開示を請求したら、その内容が審査され、書かれた事項だけで文書が特定できなければ、補正、と言って、文書を特定できるように書き直し、という手続きを経て、特に補正の必要がなければ、そのままで、開示決定が出されます。開示決定には、5種類あり、全部開示、一部開示、不存在、不開示、存否応答拒否の5つで、要は、請求に対する行政機関の回答です。

 一部開示や、不開示、というのが存在するのは、当然ながら、行政機関の保有する情報であれば、なんでもかんでも開示します、というわけにはいかないので、公開できる部分だけ公開する、一切公開できないので、非公開、ということです。当たり前の話ですが、警察庁警備局の保有する情報だから開示せよ、と公安のトップシークレットを請求しても開示されません。先ほど述べた黒塗り文書、というのは一部開示決定です。開示できない部分は黒く塗りつぶして開示されます。余談ですが、ほとんど真っ黒で出てきた文書を、海苔弁と言うこともあります。

 最後の存否応答拒否、というのは、当該行政文書があるかないかを答えるだけで、例えば個人の情報が漏れる、とか外交機密が漏れる可能性がある場合に使われるもので、行政法の教科書などではよく、病院のカルテ、が挙げられています。公立病院であればそのカルテも開示請求の対象になりますが、個人の情報が含まれているので不開示とすべきところ、不開示決定を出してしまうと、少なくともカルテは存在する、ということがわかる、つまり、何の病気で、どういう症状にあるかはわからないが、その人がその公立病院に入院している、あるいは通っている、要するになんかの病気だ、ということがわかってしまうので、あるかないかすら答えられません、というのが存否応答拒否です。

 

 公安のトップシークレットや病院のカルテを例に出しましたが、不開示になる文書というのは、第5条で列挙されています。いわゆる個人情報や、公安外交防衛情報などがこれに当たり、細かく規定されていますが、今回関係しそうなところだけ抜粋します。第2号が該当します。条文を引きます。

 

二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの

ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

 

 行政活動は、当然、一般の民間企業に対して、指導をしたり規制をしたり、あるいは、企業から、なんらかの届出を受けたり、許認可申請をされたり、ということを含んでいます。これらも行政機関の職員が職務上取得した情報にあたるので、開示請求の対象にはなりますが、特に許認可申請等の場合は、いわゆる企業機密が含まれていることも多々あるので、これをなんでもかんでも公開してしまうと、当該企業の正常な業務運営を妨害することになりかねません。ライバル企業が今なにを開発していて、その構造はどうなっているのか、といった、通常企業が公表していない情報について、行政機関が公開するわけにはいきません。

 そういったことが規定されているのがこの第2号です。

 

 情報公開法の解説は大体終わりましたので、本題に戻ります。もっと詳しく知りたい方は、法律の本文を読んでみてください。最近の法令はわかりやすく書かれていますので、読めば大体のことは理解できます。

 

 では、本題です。鉄道会社が他の鉄道会社、もしくは運輸機関と連絡運輸に関する協定を締結しようとするときは、鉄道事業法第18条、及び鉄道事業法施行規則第36条に基づき、国土交通大臣に対して必要な届出をしなければならない、ということは前回述べました。

 届出を提出するのは、これらの条文では国土交通大臣、とされていますが、鉄道事業法第64条と鉄道事業法施行規則第71条の規定により、その権限は、地方運輸局長に委任されていますので、連絡運輸に関する届出は、地方運輸局長に対して提出することになります。

 これらの届出は、行政機関、この場合は地方運輸局の職員が職務上取得した文書にあたるので、情報公開法に基づく開示請求の対象になります。

 しかし、鉄道会社という法人に関する情報なので、開示請求をしたとしても、不開示になる可能性がありますし、届出は永久保存ではなく、5年の保存期間を経て廃棄されるものなので、廃棄されていれば、不存在、となる可能性もあります。

 また、前回も少し述べましたが、協定書本体、もしくは地方運輸局に提出する届出本紙に連絡運輸範囲に関する記載がなく、連絡運輸範囲は、あくまで鉄道会社同士の内部で取り決める事項であって、それを変更する都度、地方運輸局に届出をしているわけではない、ということであれば、そもそも地方運輸局は、連絡運輸範囲に関する情報を持っていないことになるので、いくら開示請求をかけてみたところで、それを知ることはできない、ということもあり得ます。

 

 今回はこのあたりにしておきます。次回、実際に地方運輸局長に対して開示請求をかけてみます。

 

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連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(1)

 今回は、きっぷそのものの話題から少し逸れます。きっぷの発売根拠となる規則関係にまつわる話です。

 連絡運輸に関わる規則として、旅客連絡運輸規則(以下「規則」といいます)があり、その施行規程としての旅客連絡運輸取扱基準規程(以下「規程」といいます)があります。JR各社、また社局によりその名称は多少異なりますが、大体同じ構造を取っています。

 連絡運輸については、旅客会社と社局の間で、いわゆる連絡運輸範囲が細かく定められており、全線全駅で発売できるわけではない、というのは、このブログを読まれている方にとっては周知の事項だと思われます。では、その連絡運輸範囲はどこなのか、まずは、規則を見てみます。規則別表には、連絡運輸を締結している社局それぞれについて、連絡会社名、経由運輸機関名及び区間、接続駅、乗車券類の種別、特殊取扱次項が記載されています。どこの社局でもいいですが、例えば、北越急行株式会社線を取り上げてみます。

215)北越急行株式会社線


連絡
会社名


経由運輸機関名
及び区間


接続駅


乗車券類の種別


特殊取扱
事項


北越急行株式会社線


東日本・東海旅客会社線

 

 


上越線

   六日町

飯山線

   十日町

信越本線

   犀潟


片、往、続、勤定、学定、団、急、特車、座

 


 

 接続駅と発売できる乗車券類の種別はわかりますが、肝心要の連絡運輸範囲については、ざっくりとしていてよくわかりません。この表から読み取れるのは、少なくとも連絡運輸を取り扱っているのは、JR東日本とJR東海であり、北海道や西日本は取り扱っていない、ということくらいです。その東日本や西日本でも全線全駅で取り扱っているわけではありません。かつて、特急「はくたか」が走っていた頃は、六日町犀潟間の通過連絡については、JR6社との取り扱いがありましたが、今は縮小されています。

 話が脱線しましたが、要するに、規則から連絡運輸範囲を読み取るのは困難です。では、規程はどうでしょうか。結論から言うと、連絡運輸範囲は、規程別表に記載されています。みどりの窓口で連絡乗車券を求めた際、係員氏が規程別表を見ながら、発売可否を確認しているのはよくある光景です。

 そうすると、規程別表はどこで見られるのか、という疑問が湧きます。これについては、いろいろな人がJRに問い合わせをしていて結論は出ています。つまり、「内規なので公表していない」が答えです。

 そもそも、規程というのは、JR内部の取り扱い事項を定めたもの、というのが建前になっています。従って、旅客には見せられない、ということのようです。(*1)

 個人が個別に問い合わせたり、好意的な係員氏が見せてくれたりする例はあるようですが、あくまでも非公式の情報です。個人の問い合わせは、JRが回答したものなので、公式のものではないか、とも思われますが、あくまで個別に答えたもので、回答を広く頒布することは控えるように、と追記されていることからして、公式資料とはいえません。これをなんとかして、合法的かつ公式に知ることはできないか、というのを考えていくのが、今回の趣旨です。

 

 ここから先は、関係法令を詳しく見ていきます。

 そもそも、連絡運輸は、各社が勝手に契約を締結しているわけではなく、根拠法として、鉄道事業法第18条があります。

条文を引きます。

 

(運輸に関する協定)

第十八条 鉄道運送事業者は、他の運送事業者と連絡運輸若しくは直通運輸又は運賃に関する協定その他の運輸に関する協定をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 

 鉄道会社同士が連絡運輸に関する協定を締結するときは、その都度、国土交通大臣に対して届出をしなければならない、ということが定められています。「国土交通省令で定めるところにより」とあるので、省令を見てみます。この省令は、鉄道事業法施行規則を指します。

上記鉄道事業法18条を受ける条文は、施行規則第36条です。また条文を引きます。

 

(運輸に関する協定の届出)

第三十六条 法第十八条の規定により運輸に関する協定の設定又は変更の届出をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した運輸に関する協定設定(変更)届出書を提出しなければならない。

一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに運送機関の種類

二 設定し、又は変更しようとする協定の内容(変更の届出の場合には、新旧の対照を明示すること。)

三 設定し、又は変更しようとする協定の効力発生の日及び存続の期間

2 前項の届出書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 協定書の写し

二 協定の実施方法の細目を記載した書類

 

 私が注目したのは、第1項第2号です。すなわち、設定し、又は変更しようとする協定の内容、は国土交通大臣に対して届出をしなければならない、とされています。

 連絡運輸協定を締結する際に、どこの駅から駅までの範囲でお互いに連絡運輸を設定するか、というのは、両者で決定しているでしょうから、これを設定し、又は変更するとなると、連絡運輸協定の内容が新規で設定される、又は変更されるのではないか、と推測しました。

 しかし、その一方で、連絡運輸協定には、「A社とB社の間で連絡運輸を行なう」とだけ定め、具体的な連絡運輸範囲については、協定本体とは別個、それこそ両者の内部的事項として定められているとすれば、連絡運輸範囲を変更したとしても、協定そのものの変更には当たらないことから、届出は不要と解されます。

 ここまで法令を見てみたところで、具体的な連絡運輸範囲を知る方法として、私の頭の中に、「開示請求」が浮かびました。正確には、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく、開示請求です。

 

 今回はここで区切ります。続きはまた次回です。

 

(*1)

 JR各社では、連絡運輸範囲については、内規で定めているものであるから公表していない、としていますが、公営交通、例えば、福岡市交通局では、公開されています。「福岡市高速鉄道連絡運輸規程」という名称で、詳細な連絡運輸範囲は、別表に記載され、公開されています。

 全文引くことはしませんが、一部だけ抜粋すると、次のようになります。

 

別表第1

1 高速鉄道及び社の発売する乗車券による連絡運輸

(1) 相互連絡(接続駅が姪浜の場合)


連絡運輸区域


乗車券の種別


高速鉄道


接続駅


社線


1号線 室見・福岡空港間各駅

2号線 呉服町・貝塚間各駅

3号線 渡辺通・橋本間各駅

 


姪浜

 


九州旅客会社

筑肥線下山門・唐津間各駅

唐津線西唐津駅

 


片道普通券

定期券

団体券

乗継乗車券(天神南駅に限り発行する。)

 

 

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