新大村諫早間の経路変更
新幹線と、それに並行する在来線は基本的に同一路線として扱いますが、新幹線単独駅が存在する区間は別路線として運賃計算を行ないます。根拠条文は、旅客営業規則16条の2です。1項において、同一路線とみなす区間が、2項で別線扱いの区間が、それぞれ列挙されています。並行する在来線が存在しない区間、例えば、北陸新幹線の高崎~金沢間などは。単一の路線として運賃計算をする旨が16条の4に規定されています。
さて、9月23日に西九州新幹線が開業しました。西九州新幹線の扱いがどうなるか見てみます。
・同一路線扱い(16条の2)
長崎本線の諫早・長崎間(現川経由)と、西九州新幹線
・単一路線扱い(16条の4)
西九州新幹線 諫早・武雄温泉間
・別線扱い
対象なし
これだけ見れば特になにも思いませんが、諫早~新大村間は、大村線が並行しています。ここは、条文を見る限り、単一路線扱いです。別に定められた条項等は存在しません。なぜ?という疑問が湧きました。
まず、大村線は地方交通線で、一方西九州新幹線は、全線幹線扱いです。諫早~新大村間の運賃を比べてみると、大村線経由は300円、西九州新幹線経由は280円となります。個人的にはこれが理由かと思いました。
地方交通線を並行在来線とみなす区間として、山陽新幹線の徳山~広島間が挙げられます。厳密にはその一部ですが、岩徳線経由とみなしていますが、西九州新幹線の事例とは事情が異なります。つまり、この区間を岩徳線経由としているのは、光経由の山陽本線を並行在来線とみなすより、距離が短く、いわば旅客有利となることがあります。山陽本線で徳山~岩国間を通過する場合も、岩徳線経由で計算します。この方が運賃が安いため、そのように定められています。
では、西九州新幹線の諫早~新大村間について考察してみます。営業キロ、擬制キロを見てみます。
西九州新幹線経由:12.5km
大村線経由 :15.3km
西九州新幹線と大村線を同一路線とみなし、大村線経由で運賃計算をすることになると、運賃計算の基礎となる距離数が増えます。これでは旅客に不利です。逆に、大村線の当該区間を幹線扱いにするか、当該区間に特定運賃を設定する(これでは根本的な問題は解決しませんし、前後の区間を含めて特定運賃を設定する必要が生じるなど、手間がかかりすぎます)ことで問題解決を図ることも理論上は可能です。
理論上は、と書いたのは、別線扱い、正確には新幹線を単一路線とすることで、なにか不都合が生じるかを考えればわかります。新幹線経由の方がキロ数が短くなるから、といっても新幹線に乗るには別途特急券が必要ですから、結果として高くなります。よって、乗車券の値段だけで乗車経路を決める人はまずいないです。そうすると、99.9%の旅客は実乗車経路通りの乗車券を買うでしょう。そうすると、不都合が生じる、言い換えれば、精算が生じるのは、大村線経由と西九州新幹線経由相互間で乗車経路を変更した場合、つまり区間変更(経路変更)をした場合くらいしか考えられません。こんなことをする人も実務上ほぼいません。
以上の考察から明らかなように、面倒な手続きをしなくて済み、かつ弊害もほぼ存在しないことから、同一路線扱いにしなかったのだと思います。
では、実際に区間変更をしてみます。原券は、長崎~吉塚(経由:長崎・新幹線・武雄温泉・佐世保線・長崎線・鹿児島)です。これを持って、長崎から新幹線に乗り、諫早で降りました。乗換改札に人がたまたまいなかったので、改札を出て、窓口で、大村線経由にする旨の区間変更を申し出ました。
小倉博多間は経路変更が必要なのは知ってるけど、ここもそうなの、とかどっかに電話しながら補充券を書いてくれたので、区間変更券の常備券は存在せず、本社側からも経路変更が必要になることは特に周知されていないような気がしました。差額の20円を支払ってお礼を言い、大村線の快速シーサイドライナーに乗りました。ちなみに新大村の在来線改札は無人なので、新幹線経由の乗車券でそのまま乗ってきても特に差額収受ということにはならず、それすら誰も気づかないまま外に出て終了となると思います。
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