平成30年3月のダイヤ改正時から、特急「みどり」の早岐佐世保間は、乗車券のみで自由席に乗れるようになりました。これは佐世保線の普通列車を早岐発着にした救済措置と思われます。特急列車の自由席に乗車券のみで乗車できる区間は、北海道内の石勝線、新夕張新得間、奥羽本線の新青森青森間などが既にあるりますが、これらの区間とは少し様相が異なります。これらの区間では、あくまでも乗車できるのは普通車の自由席のみで、指定席やグリーン車に乗車する場合は、運賃のほかに、特急券も必要です。
その一方で、早岐佐世保間は、指定席に乗車する場合は、520円、グリーン車は770円(いずれも当時の価格)を別途支払えば、特急料金を収受されることなく乗車できます。これはJR九州のダイヤ改正告知時のPDFに明記してありました。
価格からしてこれは、指定席券、普通列車用グリーン券(Bグリーン券)の価格です。以前から気になってはいましたが、先日佐世保へ行った際、実際に試してみることにしました。上が実際のきっぷ券面です。
まず、JR九州ネット予約では、早岐佐世保間のみの予約はできませんでした。次に、えきねっとで試してみました。すると、普通に表示され、予約までできました。ちなみに、自由席は「あり」となっていますが、このまま予約を進めようとすると、エラーになり、「列車をご確認ください。」と表示されました。
(佐世保にて)
結果として、普通列車用グリーン券をえきねっと発券し、佐世保から早岐まで、9分間のグリーン車を堪能してきました。早岐から先は、「みんなの九州きっぷ」の指定席利用でしたので、方向転換の停車時間の間に、普通車指定席へ移動しました。ちなみに、「みどり」は、783系専用編成の印象が強いですが、通勤通学輸送のためか、この「みどり6号」は、787系7両編成の輸送力列車でした。次の8号も783系8両編成のようでした。
ここからは規則関係の話になります。早岐佐世保間、自由席は乗車券のみで、指定席、グリーン車はそれぞれ、指定席券、又はBグリーン券で乗車できる根拠はどこにあるのか旅客営業規則を参照してみました。
すると、57条(急行券の発売)9項が該当でした。当該条項は、「急行列車と普通列車とが直通して運転する列車又は次の各号に掲げる一部区間を普通列車として運転する急行列車の指定席に、急行列車と普通列車を相互に連続して乗車する場合は、1個の列車とみなして、1枚の急行券を発売することがある。」との条文で、要するに、急行列車(特急列車)が、途中から普通列車として運転する場合、普通列車区間の指定席料金、グリーン料金は収受しない旨を定めたものです。
本項4号において、特急「みどり」号が言及されています。引用すると、
「早岐・佐世保間を普通列車として運転する特別急行列車みどり号。」
と規定されています。
ここまで条文を見たところで、今度は時刻表を開いてみます。交通新聞社のJR時刻表によると、特急「みどり」号は全て、早岐佐世保間も赤字、つまり特急列車として掲載されています。上の条文は、あくまでも、当該区間を「普通列車」として運転する特急「みどり」号についての規定ですので、時刻表上、早岐佐世保間を普通列車として運転する特別急行列車みどり号、というものは存在しないことになります。なお、この規定をもって、当該区間の特急「みどり」号が全て普通列車である、という命題は真にはなりえません。
ちなみに、他号規定の、例えば、吉松人吉間「いさぶろう・しんぺい」号、博多吉塚間「かもめ」号は、、いずれも時刻表上においても、普通列車として掲載されています。「みどり」号と、宮崎宮崎空港間の「にちりん」号等が、よくわからない状態になっています。
旅客の見られない内規で、当該区間を走行するこれらの特急列車は普通列車とみなす、という規定があるのだと思っていますので、この部分についての考察はここまでにしておきます。要するに、早岐佐世保間の特急「みどり」号は、普通列車扱いですので、指定席、グリーン車に乗車する場合は、指定席券、Bグリーン券が必要、ということです。
もう1つ、787系には、DXグリーンと、グリーン個室があります。グリーン車に乗れるのであれば、DXグリーンに乗りたくなりました。そこで規定類をもう一度見てみます。
仮に乗れるとすれば、普通列車グリーン券でDXグリーンに乗れるのか、ということになりますが、グリーン車とDXグリーンは、料金が異なります。さて、どうなるのか。
この論点は案外簡単に解決しました。結論から言うと、乗れません。理由は、普通列車のDXグリーン料金、という概念が存在しないからです。
普通列車用グリーン料金(Bグリーン料金)は、130条2項に定められています。同条は、グリーン「料金」に関する規定ですが、急行列車の場合は、Aグリーン料金、普通列車はBグリーン料金が必要とする旨は、別途58条に規定があります。ここで重要なのは、Aグリーン料金は、急行列車にのみ通用するグリーン料金である、という点です。
DXグリーン料金は、130条1項のAグリーン料金の中の1つとして定められています。具体的には、ニ号の「c DXグリーンに対して適用する特別車両料金(A)」として規定されています。同条2項のBグリーン券規定に、例えば、「DXグリーンに対して適用する特別車両料金(B)」というようなものはありません。
つまり、DXグリーン料金は、Aグリーン料金しかありません。よって、急行列車に乗車する場合にしか適用できない料金で、普通列車のDXグリーン料金という概念は存在しないことが立証できました。
ちなみに、グリーン個室も同様です。
よって、早岐佐世保間を普通列車として運転する特別急行列車「みどり」号のDXグリーンには乗れないことになります。では、特急料金を払えば乗れるのか、とも思いましたが、当該区間はあくまで普通列車ですので、これまた特急料金という概念が存在しません。ですので、どうがんばっても早岐佐世保間のみで、DXグリーンには乗れませんでした。
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