連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(6)
長らく放置してしまいましたが、ご無沙汰しております。
東京都交通局に対する開示請求は、結論から言うと、あまり芳しくない結果に終わっています。
開示された文書
・旅客連絡運輸及び旅客営業取扱基準規程別表
・連絡運輸管理規程(ただし東京都交通局分に限る)
不存在決定の出された文書
・旅客営業取扱基準規程
・旅客連絡運輸取扱基準規程のうち、2014年9月1日以降の改定がわかるもの(新旧対照表等)
交通局の規程において、旅客連絡運輸取扱基準規程を準用し、それが更に多く準用する旅客営業取扱基準規程を保有していない、というのは前回書いた通り、鉄道営業法3条の関係で問題ありと思料しますが、これをやるとかなり時間がかかるので、とりあえず次の一手を考えることにします。
・・・が、そろそろ請求先を思いつかなくなっていました。そのとき、TwitterのDMである方から、東京都交通局は、たとえば馬喰横山駅で、JRの精算業務の委託を受けているから、その駅の事務室であれば、JRの規程類もあるのでは?という提案を受けました。
私にはその視点はなかったので、こういう方向で考えてみます。
委託、というキーワードから、精算業務を行なっているところよりも、むしろ発売窓口、要するに自治体が乗車券類の発売を受託している駅、つまり簡易委託駅の方が確度が高いのではないかと思いました。まずその方向で考えてみることにしました。
簡易委託駅は全国に散らばっていますが、POS窓口や補充券発売を行なっている駅よりもマルスを置いて、みどりの窓口あり、と謳っている駅で、かつ自治体受託という駅があれば、そこを狙ってみます。ばっと思いついたのは小浜線の上中駅です。たしか小浜市が受託していたような…と思ったので、とりあえずJR西日本にこのあたりのことを質問してみます。若狭本郷もそうですが、こちらは町なので、町よりも市の方が開示請求の取扱件数も多いだろうということで、市の小浜にしました。
回答は、そもそも小浜市の受託ではない、かつ、連絡乗車券は発売できない、というものでした。前者はともかくとして、連絡乗車券は、みどりの窓口を標榜していても、簡易委託駅では発売していない、ということであれば、やるだけ無駄だと思ったので、この線からは撤退です。
次、POS窓口の簡易委託駅を考えます。ちょうど奥羽本線の十文字駅が、JRの要員撤収に伴い、横手市が受託したという新聞記事を見たので、横手市に開示請求をかけます。
駒ヶ根市に対する開示請求によって、規則類が受託者たる市に「貸与又は交付」されていそうなことはわかったので、JR東日本との契約書に加えて、貸与又は交付された規則類の一覧、を請求しました。
結果、「旅客営業規則等運送約款」「十文字駅用簡易委託駅発券POS勉強会資料」が貸与又は交付されていることがわかりました。
もう1回開示請求をかけます。「等約款」となっていたので、細かく指定しました。ついでもPOSの勉強会資料も面白そうなので請求します。
請求したのは次の通りです。
・旅客営業規則等運送約款
・旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程、旅客連絡運輸規則及び旅客連絡運輸取扱基準規程別表
・十文字駅用簡易委託駅発券POS勉強会資料
すると、不存在決定が来ました。不存在は想定外でしたが、理由が附記されており、いずれも、JR東日本の文書であって、あくまで市には「貸与」されたにすぎず、市の公文書に当たらないため、となっていました。
貸与された文書であっても、市が業務に使用していて、市が保管しているものは公文書にあたるだろう、と考えたので、審査請求を出すことにします。
ただし、貸与された文書が、情報公開請求の対象となる公文書に当たるかどうかは、少なくとも条例には書いてありません。最高裁判例も探しましたが、明確に述べたものはないです。総務省の諮問機関の答申にはそれらしきものを見つけましたが、貸与された文書についての判断ではなかったので、参考にはなりましたが、いずれにせよ、この論点について真正面から判断された例は過去なさそうです。
それは審査請求で述べるとして、期限の3か月以内に審査請求書を郵送しました。
すると、しばらくして、担当の方から電話がかかってきました。 審査請求を受けて、請求文書が本当に存在するか念入りに調べたところ、そもそも旅客連絡運輸取扱基準規程と、旅客連絡運輸規則及び旅客連絡運輸取扱基準規程別表は貸与されてすらいないことがわかったそうです。
よって、前回の不存在決定を一度取り消して再度決定を出すということでした。市の見解としては貸与された文書は市の公文書ではない、ということなので、不存在決定ですが、という内容です。
貸与された文書が開示請求対象になるかは、また論理構成を考えて、再度審査請求を出して先に進むか考えるとして、とりあえず並行して、DMで頂いた指摘に戻ってみます。
すなわち、公営交通の駅において、JRの精算業務を受託している箇所に保管されているこれらの規程類を開示請求する方法です。
東京都交通局は、一度、存在しない、という回答を得ている(おそらく各駅の事務室まで探したわけではなく、本局の事務所にあるかどうかしか探してないだろう、とは思いましたが…)ので、福岡市交通局の姪浜駅に焦点を定めました。
貸与、の論点を回避するため、一応福岡市の情報公開請求に対する処理基準を見ることにします。行政手続条例によって、請求に対する処分を行なう際には、その処理基準を定めて公開することが義務付けられています。行政法の細かい話になるのでこれ以上は立ち入りません。
「福岡市情報公開条例の解釈及び運用」という文書が市のHPで公開されていました。
該当箇所を見てみます。
第2条第2号関係(公文書)
【運用】
1 イ ①
一般的には、福岡市公文書の管理に関する規則(平成14年福岡市規則第82号)の規定等により管理・保存されている文書等が該当するが、共用のファイリングキャビネットや書庫等に保存されているものは、当該規則等の規定によらないものであっても、「組織において利用可能な状態で保有されているもの」とみなす。
横手市の見解としては、公文書管理規則に言うところの公文書と情報公開請求における公文書は同一であって、前者には貸与文書は含まれない(これはいろいろ調べましたがどうも一般にそう解釈されているようです。私も異論はありません)ので、情報公開請求においても貸与文書は、公文書にあたらないから対象外ということでした。一方福岡市の運用基準ではこれが緩和されていて、共用のキャビネや書庫にあるものは一切合切、とりあえず情報公開請求の対象となる公文書をみなす、としているので、これはいけそうです。「みなす」とは反証を許さないという意味ですから、キャビネにあるのに公文書ではない、と主張することは許されません。仮に主張したとしても審査請求か取消訴訟で勝てます。
では、「姪浜駅事務室もしくは交通局本局において保管されている、九州旅客鉄道株式会社が作成した、旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程(別表含む)」で開示請求をかけてみます。決定通知を出すまでの期間は7日だそうです(めちゃくちゃ早いです)
1週間ほどで、決定が郵送されてきました。全部開示です。支払いを済ませて(ネットで完結しました。福岡市は進んでいます)送られてきたPDFを開けてみました。
すると、2023年8月28日現行と打たれた、旅客営業取扱基準規程、旅客連絡運輸取扱基準規程のファイルがありました。
JR各社があれだけ、内規です、見せられません、と主張してきた基準規程の最新版を遂に手に入れました。ファイルのリンクを貼っておきます。旅客営業取扱基準規程は60MBほどあるので、その点ご注意ください。(なお、ココログを離れます。容量の都合でアップロードできなかったので、AWSのサーバーを借りています)
内容を読むと、確かに釣銭に関する事項など、係員の取り扱いに関する条文も多くありますが、明らかに旅客営業規則を補完する内容の条文も多いです。これを内規だと主張するのはやはり無理があるとは思います。
まあそれはいいです。
定期的に福岡市交通局に開示請求をかけて、今後更新していく所存ですので、皆様のお役に立てれば幸いです。
ただし、福岡市に対する情報公開請求によって、JR九州が作成した公式の規程だとは言え、JR九州が公式に公開しているものではありませんし、規則は当然改定されます。それを改定と同時に検知することは情報公開請求を介する以上不可能ですので、必ずしも一言一句最新版ではにことにご留意ください。この資料の利用に関して一切の責任は当然負いませんので、ご了承ください。
で、連絡運輸の別表ですが、これは姪浜駅にも全社分はないようです。再度、別表に限定して開示請求をかけたところ、福岡市の担当の方から電話があり、姪浜駅も本局も探しましたが、福岡市交通局の分しかないが、それでもいいか、と聞かれました。こちらも受領しましたが、そもそも福岡市交通局とJR各社の連絡運輸範囲は、福岡市交通局の規程に明記されているので新情報は特にありませんでした。
連絡運輸別表は、今後も探していきますが、とりあえず基準規程の最新版を手に入れる方策が見つかったので、ある程度の成果が出ました。別表は、JR東海が窓口に設置している規程類の本に載っているらしい、という情報を得ているので、東海管内の簡易委託駅に焦点を合わせようとは思っていますが、まずは現地調査をしたいと思っています。これは少し時間がかかりそうです。
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