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2022年12月31日 (土)

連載企画:開示請求から連絡運輸範囲を知る(4)

 中部運輸局に対してかけた開示請求は失敗に終わったので、そもそも連絡運輸に関する届出にはどのようなものがあるのか、というところから考察をすることとしました。「e-gov文書管理」という政府のサイトがあり、官公庁の保有する公文書の一部が検索できます。

 運輸に関する届出、というところで、「令和2年度運輸に関する協定届出」と題する文書に、連絡運輸に関する届出が含まれていそうだ、ということがわかったので、この画面コピーを取って、保管先の東北運輸局に開示請求をかけてみました。何が出てくるかはさっぱりわかりませんが、保有文書として記載されているのだから、不存在、ということはあり得ません。

 しばらく経ってから、請求した文書が送られてきました。PDFデータが送られてくるとばかり思っていましたが、郵券と、必要書類を紙で送って、開示文書が、紙に印刷されて郵便で届きました。システムを使うより紙でやりとりした方が事務処理上楽なのでしょうね。

 さて、中身を見てみます。

 開示された文書はいくつかありましたが、そのうちの野岩鉄道と会津乗合自動車の分を見てみます。中身は特別企画乗車券に関するもので、一時限りの連絡運輸に関する届出でした。普段から連絡運輸を行なっていない会社と連携した企画乗車券を発売する際には、確かに届出が必要です。一時限りの連絡運輸であってもその都度届出が必要なので、そう簡単に他社と連携した特別企画乗車券は発売できそうにないな、ということがよくわかります。

 詳しい内容は、添付のPDFファイルをご覧ください。

東北運輸局開示文書1

 協定書の内容は、事業者が通常公表しておらず、公表することによって、当該事業者の正当な利益を害するおそれのあるもの、として当事者の名称と有効期間以外は黒塗りになっています。まあこれは仕方ないです。また最終頁の運賃設定についても、事業者ごとの割引率や取り分は黒塗りです。理由は協定書と同じです。これも頷けます。

 開示された文書は、これ以外にもあり、仙台市交通局とバス事業者の間で締結された協定以外は、全て特別企画乗車券に関する一時限りの連絡運輸に関する届出でした。仙台市交通局のは、ほぼ全部黒塗りで、一体これがなんなのか、全くなにもわかりませんでした。

 ここまで見てみて、一時限りの連絡運輸であっても都度届出をしているのであれば、普通連絡運輸に関しても、連絡運輸範囲を変更するごとに届出がされているのではないか、と推測しました。保存期間は5年間ということもわかりましたので、その期間に連絡運輸範囲を変更していることが確実にわかっている、肥薩おれんじ鉄道に照準を合わせ、今度は九州運輸局に対して、開示請求をかけてみます。肥薩おれんじ鉄道は、特急「36ぷらす3」の運行開始時に、通過連絡運輸を設定し、JR九州全駅に連絡運輸範囲を拡大しています。

 開示請求書を提出してしばらくして、担当係官の方から電話が入りました、この方は親切で、例えば、JR九州との連絡運輸で、JRだけが割引をしている場合、届出義務はJRにある、とか、協定書の内容は、当事者と有効期間以外黒塗りになります、そういう答申が出ていますので、とかいろいろ教えてくださいました。そのやり取りを踏まえて、開示請求書を補正してほしい、とのことで補正案まで作ってメールで送ってくださり、それに住所氏名等を書いて返信しました。

 これまたしばらくして、数十枚の開示文書が送られてきました。年度別にまとめてあり、とても仕事が丁寧な方でした。開示請求などというのは役所側にしてみれば負担でしかなく、運輸局であれば担当は総務課で、専属の担当係官がいるのかもしれませんが、いずれにしろ、黒塗りをしたり、結構な手間がかかるはずです。

 開示された文書は、そのうちスキャンしてもよいですが、全て特別企画乗車券に関する一時限りの連絡運輸の届出でした。きっぷオタクとして興味深いきっぷもあったので、内容は面白かったですが、いずれにしろ、普通乗車券の連絡運輸範囲を変更する旨の届出はありませんでした。

 ここまでやってみた結論としては、普通乗車券に関する連絡運輸範囲の変更、というのは届出義務がない、おそらく、連絡運輸を締結した最初のときに、自動更新条項があり、協定書の内容に、細かい連絡運輸範囲というのは含まれていないのだろう、というところです。鉄道会社か国土交通省鉄道局に法令解釈という観点から質問でもすればわかるのかもしれませんが、開示請求をして出てこない、ということは、都度の届出はされていません。

 よって、地方運輸局に対して開示請求をかけることで連絡運輸範囲を知ろう、という試みは失敗に終わりました。

 これで諦めたわけではないので、まだ続きます。今度は少し違う観点から開示請求を行ないます。開示請求の利点は、何人も見られる資料である、という点にありますので、あくまで開示請求という方法にはこだわります。意外なところから、意外なものが出てきましたので、それはまた次回にします。

 

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