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2022年10月16日 (日)

留萌線一部廃止と石狩沼田の簡易委託

 留萌線の一部廃止が、来年3月末でほぼ決定してしまいました。「ほぼ」というのには鉄道営業法上の細かい規定が絡んでいます。まず、JR北海道としては、留萌線の石狩沼田~留萌間について、令和4年8月30日、国土交通大臣宛に、鉄道事業の廃止届出を行なっています。同法第28条の2の規定により、「廃止の日の一年前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない」とされているので、届出上の廃止日は、1年以上先の令和5年9月30日とされています。

 しかし、同条4項の規定により、上記の廃止日は繰り上げることができます。繰り上げるための要件は、2項、及び3項に規定されており、2項では「関係地方公共団体及び利害関係人の意見を聴取」し、3項において、「前項の規定による意見聴取の結果、第一項の届出に係る廃止の日より前に当該廃止を行つたとしても公衆の利便を阻害するおそれがないと認めるときは、その旨を当該鉄道事業者に通知する」としており、当該通知を受けた場合、廃止日を繰り上げることができる、とされています。要するに、沿線自治体と住民その他の反対意見がなければ、繰り上げることができます。札沼線の一部廃止の時もそうでしたが、(詳しくは、こちらを参照)JRとしては最初から、繰り上げ後の日付で廃止の交渉を行ない、届出上の廃止年月日は同法の規定に基づく、いわば形式上のものとしています。法の趣旨としては、鉄道事業の廃止は、沿線自治体に多大な影響を及ぼすことから、原則1年以上の時間をかけてじっくり協議しなさい、繰り上げは例外措置、ということと推察しますので、最初から1年に満たない期日で交渉を進めるのは拙速なようにも思いますが、個人的な見解です。

 沿線自治体等の意見聴取の結果として繰り上げが認められないことはまずないので、予定通り、来年令和5年3月31日で留萌線の石狩沼田~留萌間は廃止となることと思われます。

 留萌線の廃止協議は、沿線自治体で温度差が激しく、留萌市は廃止賛成、むしろさっさと廃止して、留萌駅跡地の再開発をしたい意向の一方で、沼田町、秩父別町、深川市は反対、という情勢で、北空知3市町が、石狩沼田までの存続を求める、一部廃止なら賛成の立場を変えず、結局、深川~石狩沼田間は2025年度を目途に廃止、という方向で落ち着いたようです。

 正直、この結論は意外でした。石狩沼田まで残すとなれば、同駅に折り返し用の信号設備を整備する必要があります。石狩沼田は、以前は交換駅で、更に昔は札沼線の接続駅でしたが、今は単なる棒線中間駅に過ぎません。信号設備新設の負担を避けたいJR北海道はあくまでも全線廃止を前提に議論していたので、当分協議はまとまらないだろうな、と思っていました。

 実際の廃止協議も2020年10月の段階で、部分廃止の案が出され、各市町が持ち帰り調査検討することとなり、2022年7月21日の協議においても、各首長は結論を出さず、持ち帰り、となっていました。この時に、留萌までは翌年3月末、石狩沼田までは2026年3月末という明確な期限が出されました。協議を続ける、とされたことから、まだ揉めるだろうな、と思っていましたが、8月30日の協議で容認されました。個人的には急に決まったな、という感想です。

 確かに留萌線に乗っていると、深川発車時点ではそこそこ乗っていますが、石狩沼田まででほぼ全員降りてあとは空気輸送になります。峠を越える山間部に集落はほぼなく、乗車は当然ゼロ、山間部を抜けると、いきなり留萌市街地に入るので、乗客が増えることなく留萌に着きます。これでは石狩沼田から先はいらない、と言われても仕方ないです。

 留萌市内の通学需要は沿岸バスが担っていて、沼田町では通学需要の話が出ますが、留萌市では殆ど出ていません。そのうえ、深川から留萌までは沿岸バスの留萌旭川線が国道を走っていて、中央バスの都市間バス高速るもい号が、深川留萌道を走っています。高速るもい号は、深川市街と留萌市街相互間で乗降ができます。

 北海道における鉄道の強みは、冬期間の運休の少なさと定時性にあるとされてきましたが、近年ではその傾向も変わり、特に留萌線は、吹雪で、冬はほとんど運休しています。バスは走っています。実際、今年の冬に、留萌線が運休していたとき、高速るもい号で、札幌から留萌まで乗りましたが、バスは、市街地にこまめに停留所があるので、降りたいところで降りられます。所要時間も大差ありません。しかし、鉄道ではそうは行きません。駅にしか着きません。しかも留萌駅は町の端部にあります。たまにしか乗らない旅行者の私でもバスの方が便利だな、と思うので、日常利用ではなおさらでしょう。一介の鉄道ファンとして鉄道は残ってほしいですが、現実は厳しいです。

 国道を並走する沿岸バスは、秩父別町経由で、沼田町は通りません。一方で、中央バスが深川沼田線を走らせています。要するに全線で既に代替交通機関が存在していることも、廃止が急に進んだ理由の一つだと推測しています。

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 来年4月以降の終着駅となる石狩沼田駅は、簡易委託駅です。常備券と、補充券の両方が設備されていて、料補もありますが、指定は出せません。乗車券は、委託契約上、道内なら出せるそうですが、備え付けの早見表に乗っている区間しか作れないようですが、他駅発でもできなくはないそうです。

 余談ですが、留萌線を減便したときに、深川から石狩沼田までの通勤通学需要を補填するため、定期券所持者専用で、朝深川行き、夜石狩沼田行きのバスが運転を始めています。駅に掲示がありました。時刻表には載っていません。

 冬の臨時列車がまだ発表されていませんので、なんともわかりませんが、さよなら留萌線号みたいな臨時列車は出るんでしょうか。

 

 

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