BRT線と特定都区市内制度
気仙沼線と大船渡線の一部をバス転換したBRT線は、実態としてはJR東日本直営のバス路線で、鉄道線と連続して利用する場合、純粋な鉄道線と同等の扱いではなく、かといって、別会社の連絡運輸扱いでもない不思議な扱いになっています。
規則関係を見てみましょう。まず、旅客営業規則の定めでは、17条に、「気仙沼線BRT柳津・気仙沼間及び大船渡線BRT気仙沼・盛間の一部又は全部の区間を乗車する旅客の取扱い等については、別に定める」とあります。よって、BRT線は、あくまでもJR線であることが読めます。また、「別に定め」られたものを探してみます。JR東日本のホームページを見ると、BRT線を利用する場合の規則として、「一般乗合旅客自動車運送事業取扱規則」が見当たります。
内容を見てみると、要するにBRTとはバス、すなわち自動車なので、レールの上を走る鉄道の営業規則とは性格を異にします。事故を起こした場合どうなるか、なども書かれています。運賃関係の規則は概ね鉄道線の旅客営業規則に準じた内容ですが、バス特有の規定と思われるものもあります。
そんな中で、最後の47条に、「自動車線と鉄道線を乗り継ぐ旅客の運送及びこれに附帯する取扱等については、別に定める場合を除いて、自動車線と鉄道線を通じた全区間について、旅客規則を適用します」と書かれています。
この規定を根拠にすると、鉄道線とBRT線を連続して利用する場合は、原則的に、BRT線内も含めて、鉄道線の旅客営業規則及び旅客営業取扱基準規程が適用されることになります。ただし、書いてある通り、「別に定める」場合を除きます。ちなみに、BRT線は、ここでいう「自動車線」にあたります。
なぜBRT線の規則関係が気になったかというと、BRT線と鉄道線を連続した場合の特定都区市内制度の適用有無はどう判断するか、という命題を検証したくなったからです。
まず、BRT線と鉄道線を連続して利用する場合の運賃は、BRT線の運賃と鉄道線の運賃の合算とされています。BRT線を間に挟んで鉄道線を利用する場合、鉄道線の営業キロ(運賃計算キロを含む)は通算します。この根拠は、同社の内規だそうですが、時刻表には記載があります。
では、マルス端末ではどうかを見てみます。BRT線を利用する場合、BRT線を社線扱いとしてプログラムが組まれているという話は聞いていました。実際に乗車券の券面を見ても、経由表記が例えば、「柳津・BRT線・気仙沼」と接続駅の表記があり、経路数が8を超えると補充券対応になるなど、連絡運輸に準じた扱いがされています。
BRT線と鉄道線の運賃を別々に計算して、それを合算する、通過連絡のような規定もある、となれば合理的な扱いです。
しかしながら、先述した通り、鉄道線とBRT線を連続して利用する場合は、原則的に全区間で旅客営業規則を適用する、こととされています。連絡運輸扱いであれば、少なくともマルス端末上では、有効期間以外、営業キロを基準に判定する、往復割引や特定都区市内制度の適用判定は、鉄道線のみで判断されてしまうことになります。
では規則上、その取扱いは正しいのかを見てみます。「別に定め」られていれば話は別ですが、これは公表されていないので、とりあえず無視します。
まず、先述の通り、旅客営業規則17条の定めにより、BRT線は社線ではなく、あくまでもJR線であることが読めます。この規定と、一般乗合旅客自動車運送事業取扱規則47条からすると、BRT線を含めた利用区間全区間の営業キロをもとに、往復割引や特定都区市内制度の適用有無を判定すべきではないかと考えられます。
まず往復割引を、えきねっとで試してみます。鉄道線の営業キロが600kmを超えず、BRT線を含めて初めて600kmを超える区間を指定してみれば、どういう判定をしているかがわかります。
区間は、沼津⇔気仙沼(経由:東海道・東京・新幹線・仙台・東北・小牛田・石巻線・前谷地・気仙沼線・柳津・BRT線・気仙沼)です。鉄道線の営業キロは、551.5kmです。BRT線の55.3kmを含めて606.8kmと、初めて600kmを超えます。
結果、往復割引が適用されました。運賃は、鉄道線の1割引運賃、8010円と、BRT線の1割引運賃1050円を合算した9060円の2倍、18120円です。
結論として、往復割引の場合は、鉄道線とBRT線の営業キロを合算して、適用有無を判断しているようです。BRT線は、マルス上でも単なる社線扱いではなく、補正がかかっていることが推察できます。
では、特定都区市内制度はどうでしょうか。またえきねっとでやってみます。区間は、仙台→水沢(経由:東北・小牛田・石巻線・前谷地・気仙沼線・柳津・BRT線・気仙沼・大船渡線・一ノ関・東北)です。鉄道線の営業キロは、160.5km、BRT線を含めた全区間は、215.8kmです。
上記の規則解釈が正しければ、発駅は、「仙台」ではなく、「仙台市内」となるはずです。
結果は、「仙台」単駅でした。えきねっとでは、特定都区市内制度が適用される場合、「大阪市内」などと表示されるので、本件においては、特定都区市内制度が適用されていないことを示唆しています。
発券しても当然、「仙台」単駅でした。規則関係に強い、(と私が思っている)東日本管内の窓口で幾つか訊ねてみましたが、回答は、「BRTは社線だから」というものでした。
少なくとも社線ではない(マルスの挙動としてはそうですが)ので、JR東日本本社回答を頂戴することにしました。2週間ほどして返ってきた回答は概ね次のような内容でした。
・BRT線と鉄道線を連続して利用する場合、特定都区市内制度適用有無の判断は、鉄道線の営業キロのみで判定する。
・BRT線を中間に介在させる場合は、前後の鉄道線の営業キロは通算して判断する。
この取り扱いの根拠は次のようなものでした。
まず、BRT線と鉄道線を連続して利用する場合、一般乗合旅客自動車運送事業取扱規則47条により、全区間旅客営業規則に基づくこととしており、旅客営業規則では、17条において、「気仙沼線BRT柳津・気仙沼間及び大船渡線BRT気仙沼・盛間の一部又は全部の区間を乗車する旅客の取扱い等については、別に定める」と定めており、今回は、この別に定めた内規によるものだとしています。ここまでは想定通りです。
当該内規の名称は明らかにされていませんが、当該内規には、鉄道線とBRT線を連続して利用する場合は、「鉄道線とBRT線の運賃を別々に算出し、それを合算する」と定められています。中間にBRT線を介在させ鉄道線を利用する場合、前後の鉄道線の営業キロを通算することも書かれているそうです。
よって、特定都区市内制度の適用判断は、鉄道線の営業キロのみによって判断する、と結論づけられていました。
論証が飛んでいるように思いますので、私なりに補足すると、要するに、BRT線と鉄道線を連続して利用する場合、それぞれ別個に計算するのであり、特定都区市内制度は、BRT線が含まれる特定都区市内が存在しないことから、鉄道線の運賃計算に関する制度であるため、BRT線の運賃計算には関係がない、従って、特定都区市内制度の適用判定は、鉄道線の営業キロのみによる、ということだと考えられます。
規則解釈として論理的に矛盾はしていません。BRT線がJR線だという旅客営業規則17条は総論であり、各論たる内規が総論に勝つのは法規則の解釈として当然のことですので、特に違和感はありません。
ただし、往復割引の場合は鉄道線とBRT線の営業キロを通算して判断する、という規定が、内規に、仮に無いとすれば、規則解釈としての整合性を欠いてはいます。なお、往復割引の場合との比較をして質問したわけではないので、そこまではわかりません。
マルスの挙動に合わせた回答とも取れますが、いずれにせよ、本社回答という「判例」が出たので、この命題には結論が出ました。
えきねっとで発券したきっぷは、ちゃんと使ってきました。小雪の舞う宮城県で、日の暮れた気仙沼市内で夕食を採る店を探しているときは体の芯まで冷えましたが、無事にぐるっと一ノ関まで辿り着きました。
(志津川にて)
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令和3年(2021年)も大晦日になりました。
今年もよく出かけました。数えてみると、北海道滞在日数は、延べ24日間、航空機搭乗回数は、ちょうど30回、新幹線利用は16回、サンライズには3回乗っていたようです。昨年より多かったです。新型コロナの影響で航空券が格安になっていた影響で、羽田から長距離移動を繰り返していた印象です。毎週羽田へ行っていた月もあります。8月とか12月とかですね。。会社の後輩には呆れられていますが、今年も平穏無事に終わったように思います。
年末にかけて旅行客が増えてきたように思いますが、それでもまだまだ以前の水準には戻っていません。道内の常宿にしていたホテルが無くなってしまったり、よく行っている小田急系列のパン屋さんが無くなったりと、こんな世相がいつまで続くんですかね。農学部にいる弟が、あと2、3年は続くでしょう、と感染症の教授が言っていたと教えてくれましたが、東大教授がそう言うならそうなんでしょうかね…
それはともかく、みなさま今年もお付き合いいただき有難う御座いました。来年も1月から3月初旬までは北海道方面に多くでかける予定をしていて、その後少し静かになると思いますが、変わらず旅を続け、不定期にはなりますが、ブログの更新も続けていきます。来年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは、よいお年を!
敬白
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