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2020年5月 8日 (金)

札沼線③ラストラン

  札沼線の北海道医療大学~新十津川間は、令和2(2020)年5月6日(水)をもって営業を終了しました。この翌日が、鉄道事業法第28条の2の規定に基づき、平成30(2018)年12月20日、JR北海道から国土交通大臣宛に提出された廃止届出に記載の日付です。同法に基づく廃止日は、5月7日(木)ですが、営業は前日に終了します。5月6日をもって鉄道事業を廃止する、とすると、その日は営業できなくなってしまいますので、必然的に翌日付の廃止となります。

2020_03020809_20200508122501 (札比内にて。2020年3月2日撮影)
 事業法上の細かい話はさておき、札沼線の最終運行は5月6日ではなく、4月17日でした。新型コロナウイルス感染拡大による影響で、18日以降は営業を休止し、そのまま廃止となりました。

 この4月17日最終運行が決定するまでの経緯は、紆余曲折を極めます。

 まず、鈴木北海道知事は、全国に先駆けて、2月28日から、道内の感染拡大を防止するため、「緊急事態宣言」を出しました。このときの同宣言は、法令等の根拠のないものでしたが、道内都市間の移動を控えるよう呼びかけられ、学校の休校措置等が取られました。私は丁度この宣言が出されたとき、道内を旅行中でしたが、都市間の移動が大幅に減少し、JR北海道の特急列車、都市間バスともに、惨憺たる乗車率になっていました。北海道独自のこの宣言は、3月19日をもって終了しました。

 翌月4月3日(金)に、JR北海道は4月11日から5月6日までの運転計画を発表しました。廃止を前に利用客の増加が見込まれることから、新十津川発着列車を、現行の1往復から、2往復に増発し、一部列車の時刻変更を実施、これとあわせて、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う利用客数の抑制を目的として、GW期間中の5月2~6日の間、石狩当別~新十津川間を運行する列車は、全列車、全車指定席での運転が発表されました。このときの運転計画によると、GW中の列車は、4両編成、5両編成で運転するものもある、と書かれていました。座席指定券の発売は追って発表する、とされました。

 GW中は実家に帰省することにしていましたが、この運転計画を見て、乗りに行こうか、と思いました。列車名は、「思い出お~い札沼線1号」とかになるのか、それとも単に「5426D」とかになるのか、などと空想し、1両限界のホームに5両編成が停車するのは見てみたいな、などと考えていました。

 これで落ち着くのかと思いきや、翌週4月6日(月)に、政府の対策本部が、東京都、大阪府、福岡県などを中心とした大都市圏を対象に、新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条の規定に基づく、いわゆる「緊急事態宣言」を発令しました。このとき、北海道は対象区域に入っていませんでした。

 「緊急事態宣言」の発令をふまえて、4月15日(水)に、新たな運転計画が発表されました。11日に、北海道新聞から、「札沼線の運行終了前倒し」が検討されているとの報道がありました。それで正式発表された内容は、最終運行日は、4月24日(金)とし、翌週27日(月)に、沿線4町の住民のみ乗車可能なラストラン運行を行なう、というものでした。18日から24日までの新十津川発着列車は4両編成で運転する、とも書かれていました。3日に発表された臨時列車は、この段階でも運転継続の予定でした。ちなみに、当該臨時列車(新十津川発着の9427D~9428D列車)は、4月11、12日の2日間、既に運転されていました。

 GW中の幻の全車指定席列車は無くなりましたが、町民限定のラストラン運行は、身分証の携帯が必要なのだろうか、これはJR初の試みではないか、などと考えたりもしていました。なお、外出を控えるようにとされていることから、町外からの乗車、撮影は極力控え、乗車する場合もマスク着用、北海道の寒い4月ですが、窓を開けての走行なども記載されていました。

  このニュースリリースの「1 列車運行について」には留保条件が付されており、「不測の事態により最終運行を繰り上げる場合があります」とされていました。後から考えれば、これが次の段階の伏線で、社内ではすでに繰り上げが検討されていたのではないかと思っています。

 翌日の4月16日(木)、政府の対策本部は、特措法に基づく「緊急事態宣言」を、全国に拡大し、期間は4月17日(金)から5月6日(水)までとする、と発表しました。安倍総理がこれを発表したのが4月16日の16時頃でした。

 この「全国」には当然、北海道も含まれます。2月に出した道独自の宣言とは異なり、今度は法令に基づく宣言です。これを受けて、同日20時過ぎ、JR北海道が突如、ニュースリリースを発表しました。

 そこには、

①最終運行は4月17日(金)新十津川駅10時発となります。

②以降の列車は運休とさせていただきます。

という、前日の発表を覆す衝撃の内容が記載されていました。

 前文には、「大変残念ではありますが、不測の事態に至ったと言わざるを得ず、さらに最終運行日を繰り上げます」と書かれていました。

 ちなみに、この発表が出された20時以降に東京羽田を出発する航空便の最終出発は21時、翌朝の始発便は羽田0615発→新千歳0745着ANA便です。新千歳空港から新十津川駅までは道央道経由で137kmです。到着後すぐにレンタカーを借りて全速力で飛ばせば、ぎりぎり間に合うかもしれない時間です。道央道の新千歳空港ICから深川ICまでの法定速度は100km/hなので、法定速度遵守でも、2時間あれば、たぶん間に合ったと思います。ニュースでは、この便に搭乗して、石狩月形駅で最終列車に乗り込んだ(を見た)という人が取材されていました。

 いずれにせよ、ラストラン列車に乗車、又は見送ることのできた人は、沿線の住民に限られ、遠方の人にはかなわないこととなりました。新十津川1000発の最終列車発車時には、沿線の方がそれなりに集まっていたようですが、静かなラストランになりました。

 ところが、北海道テレビ(HTB)が、「緊急企画」と称して、このラストラン列車を、新十津川から石狩当別まで、報道ヘリを飛ばして追いかけ、ひたすら列車を撮り続け、それを生放送で流す、という離れ業をやってのけました。この放送は、Youtube公開されています。

 それ以降、列車が走ることはなく、石狩月形、札比内の乗車券発売、駅、又は委託販売の札沼線記念入場券発売も中止されました。入場券については、郵送販売がなされることが発表されました。これは後日記事にします。

 正式な廃止日を迎えた5月7日(木)、踏切や橋梁、駅のホームに柵が立てられ、駅の看板は取り外されました。廃止後の用地については、新十津川町が、圃場整備の一環として、農地転用検討を発表したほか、月形町がトロッコ運行を検討、などと報じられていますが、まだ具体的な動きはないようです。

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 それで最後にきっぷの話題ですが、4月24日への繰り上げが決まった4月15日の夜、みどりの窓口へ行って、5月6日の「新十津川→浦臼」の乗車券を購入しました。翌日には発売制限がかかったようですが、この時はまだ買えました。当初の発表では、乗車券だけでは乗れず、これに座席指定券が必要でした。

 最終運行日が二度も繰り上がり、正式発表の翌日に突然、最終運行を迎えた鉄道路線は前代未聞で、今後、このような事態が起きないことを願うばかりです。GW中に運行されていれば、法的拘束力はある一方で罰則のない特措法の緊急事態宣言では、大勢の乗客、見送り客で溢れ返り、確実に感染は拡大したでしょうから、適切な判断だったのだと私は思っています。

 

 

 

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