東日本大震災の津波被害で、長らく運休していた山田線の釜石~宮古間ですが、今年の3月24日に全線復旧し、三陸鉄道リアス線として開業しました。同じく津波被害を受けた大船渡線や気仙沼線がBRT化された一方で、沿線自治体がBRTを拒否し、あくまでも鉄道での復旧を求めたといいます。JR東日本としては、BRT化を提案していましたが、最終的に、鉄道設備の復旧は、JR東日本が行い、その後の運営は、三陸鉄道がこれを行う、という案で決着がつきました。
(宮古発釜石行き)
同じく被害を受けた三陸鉄道の南北リアス線が、比較的早期に復旧したのとは対比的に、JR東日本の路線が復旧するまでに、実に8年もの時間がかかったのは、国の災害復旧支援制度が関係しているとされています。
当時の制度では、国の支援を受けられるのは、赤字の会社に限られており、それ故に黒字のJR東日本に財政支援は出来ませんでした。今は制度が改変され、一定の支援は受けられるようになっていますが。
(宮古にて)
全線復旧後の運行は、宮古、及び釜石で接続する三陸鉄道の北リアス線、及び南リアス線と一体化され、路線名称も久慈~盛間を通しで「リアス線」とされました。形としては、山田線の「復旧」ですが、地元では、三陸鉄道リアス線「全線開業」と言っていました。
運行開始は、3月24日ですが、その前日には、関係者、及び招待客のみが乗車できる記念列車が運転されました。沿線では大漁旗などで盛大な出迎えが行われたそうです。その模様を、私は青森のテレビで眺めていました。
(閉伊川橋梁)
翌日、八戸から八戸線、久慈、北リアス線と乗り継ぎ、宮古駅に降り立ちました。駅舎内は、遠方から乗りに来た鉄道マニア、地元の人で溢れかえっていました。改札口前には、次の釜石行きを待つ人が長い列を作っていました。
みどりの窓口で用事を済ませた私は、(これは次回記事にします)その列に並ぶ前に、隣の三鉄ショップで記念品を買いました。AirPayが導入されていて、クレジットカード、Suicaまで何でも使えました。
(対向の久慈行き)
改札に戻ると、さきほどの長蛇の列は、列車内に移動したようでした。列車は、一般形と、レトロ車両の2両編成でした。ちなみに、前日の記念列車は、4両編成だったようです。
先頭車両の一番前に陣取って、宮古を出発です。津波被害を受けたところは、真新しい白いバラストと真っ白なPC枕木が敷かれた線路で、駅も綺麗に作り直されていました。それでは、被害の無かったところは以前のままかと言うと、そういう区間もありましたが、特に曲線を中心にレールの交換などがなされていました。
中間駅の各駅で乗降が多く、ワンマン運転のこの列車は運転士がその度に運賃三角表を見ながら精算していました。沿線の人たちも、列車が来れば、手を振ったり、オ、列車が来たぞ、みたいな顔でこちらを見ていたり、と開業初日らしい雰囲気でした。8年も錆びつくばかりの鉄路に列車が走ってきたのですから、そうなるのもよくわかります。特に印象的だったのが、降りるときに、おばさんが、「これからもよろしくお願いします」と言っていたことでした。
(陸中山田駅)
途中の主要駅、陸中山田では、地元客のほぼ全員が入れ替わりました。簡易委託で、硬券やら補充券やらを発売しているようです。実際、硬券のきっぷを持った人も多く乗ってきました。
陸中海岸は、言わずと知れたリアス式海岸で、リアス線も、海辺を走ったかと思えば、山奥を走ったりします。並走する国道の車が、列車に速度を合わせて走り、中から子どもが手を振っていました。運転するお父さんも、こっちを指差したりしていました。
(大槌→鵜住居)
特に被害の大きかった地域では、町ごと造成中で、新興住宅地かと見紛うような整然とした町並みが広がっていました。その一方で、まだまだ空き地も多く、復興は遠いような気がしました。阪神大震災を受けた神戸ですら、20年以上経った今でも、時々震災の爪痕を見かけるくらいなので、息の長い事業です。
釜石までは1時間半で、表定速度は40km/h前後です。旧山田線時代は、盛岡直通の快速「はまゆり」が宮古発釜石経由で片道1本のみ走っていましたが、今はすべて普通列車で、朝の岩手船越→宮古の区間列車を除いて、釜石⇔宮古の通し運転(上下11往復)で、一部の列車は、盛、又は久慈まで直通しています。
この日のきっぷは、企画きっぷの「片道途中下車きっぷ」を使いました。名称からわかる通り、途中下車可能な片道券で、値段は、通常のきっぷと同じです。ただし、設定区間は限られています。三陸鉄道は全線乗りとおすと、163kmもあり、日本最長の第三セクター鉄道ですが、線内のきっぷは途中下車不可です。100km以上のJR連絡券を買えば、連絡運輸規則に基き、途中下車可能になりますが。
久慈で八戸線から乗り換える合間に窓口へ行って購入しました。車内での発売はありませんので、必ず乗車前に買う必要があります。
その後は行っていませんが、これからもがんばってほしいと思います。
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