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2018年4月18日 (水)

学割適用の金額入力(2)

 前回、学割適用の金額入力券を紹介しました。そのきっぷは、次のファイルです。「券面の表示について、1点、気になることがあります」と書きましたが、それは、有効期間表示についてです。
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 社線連絡乗車券は、旅客連絡運輸規則に基いて発売されますが、その中に有効期間について定めた一文があります。同規則75条1項イ号(ロ)がそれにあたります。引用すると、

「東京、…付近旅客会社線大都市近郊区間と、この区間に接続する連絡会社線との場合」には、「(イ)の規定にかかわらず、1日とする」とあります。

 本件について考察してみると、まず、「東京→北千住間」は、「東京、…付近旅客会社線大都市近郊区間」に含まれます。次に、北千住接続の東武伊勢崎線は、「この区間に接続する連絡会社線」であるため、本条文が適用されます。

 そうすると、(イ)の規定に関わらず、有効期間は、「1日」となるのが通常であるとも考えられます。

 なお、この(イ)というのは、「一般の場合」とされており、JR線と連絡会社線の営業キロを通算し、JR単独乗車券と同様の計算をする、という規定です。すなわち、100kmを超えると、2日間有効、途中下車可能となります。

 では、本件はどうか、というのを考えてみます。「東京→(東武線)伊勢崎」の営業キロを通算すると、100kmを超えます、更に、東武線内単独で見ても、100kmを超えています。東武鉄道は、自社線内完結で100kmを超えるきっぷの場合は、2日間有効で、途中下車を認めています。この部分だけ見ると、本件は、2日間有効、途中下車可能、となる様にも思われます。きっぷはこれに即して発券されています。

 しかしながら、(ロ)の文言を見ると、「…の場合には、(イ)の規定にかかわらず」とあります。「かかわらず」というのは、(イ)に規定されている内容を全て排除するということなので、これを読む限り、本件は、「1日間有効、途中下車不可」となるほかありません。

 ここでもう一つ、条文を紹介します。同規則76条です。同条は、「途中下車」について定めています。その3号をみると、「前条第1項第1号イの(ロ)に規定する区間に発着する普通乗車券所持の旅客は、その区間内の駅」とあり、本文とあわせて読むと、当該駅において、途中下車はできない、ということになります。前条第1項第1号イの(ロ)に規定する区間」とは、要するに、大都市近郊区間のことです。

 この条文とさきほどの有効期間の議論をあわせると、「東京→(東武線)伊勢崎」のきっぷは、大都市近郊区間に発着する乗車券なので、途中下車はできず、有効期間も1日になるように考えられます。

 しかしながら、条文の解釈として、これで適切か、という疑問が浮かんできます。つまり、北千住で東武線のきっぷを買い直せば、北千住→伊勢崎間は、100kmを超えているので、なんの問題も無く、「途中下車可能、2日間有効」となります。その一方で、JRとの連絡きっぷを購入すると、「途中下車不可、1日間有効」となる、ということになります。これで果して合理的、といえるでしょうか。きっぷの買い方で旅客不利になることがあるというのは、旅客営業制度の趣旨に反します。

 もう一度、途中下車を定めた76条をみてみましょう。一見すると、券面表示区間の全てについて途中下車不可を定めているようにも思われますが、よく読むと、途中下車ができないのは、「その区間内の駅」であります。「その区間内」というのは、直近の「前条第1項第1号イの(ロ)に規定する区間」を指すと解釈するのが妥当かと思います。そうすると、つまり、途中下車ができないのは、「前条第1号イの(ロ)に規定する区間」の駅であり、この区間とは、すなわち、大都市近郊区間のことです。つまり、途中下車ができないのは、JR線内の大都市近郊区間にある駅のすべて、ということになります。従って、連絡会社線内での途中下車は妨げていない、ということがいえると考えます。

 これらのことを考え合せると、東武線内完結の乗車券との均衡を図るために、東武線内は途中下車可と考えるのが相当です。規則に忠実にきっぷを発券するとなると、「有効期間は1日、ただし、東武線内に限り途中下車可」という謎なものが出来上がるはずです。

 しかし、発券されたきっぷは、2日間有効、途中下車は不可でははない、というものです。

 このきっぷが誤発券だとは思いませんし、マルスの性能上、営業キロ数から有効期間を判断しているようですので、もし上記の謎なきっぷを発券するとすれば補充券になると思います。しかしながら、本件を考えていると、これらの規定自体が相互に矛盾を抱えているといわざるを得ません。もしかすると、旅客連絡運輸取扱基準規程で補正されているのかもしれませんが、同規程は内規のため旅客は、通常見れないので、なんとも言えません。

2018_03040135(特急「りょうもう」 北千住にて) 

 途中下車するわけではなく、北千住から太田行きの特急「りょうもう号」に乗車し、伊勢崎行きの各駅停車に乗り換えて、伊勢崎まで行きましたので、実使用する際には、なんの不便もありませんでしたが、気になったので、考察してみました。

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コメント

これは、マルスのバグです。

有効日数、途中下車可否の考え方はご認識の通りでマルスも対応していますが、
・金額入力を使用し
・全区間の営業キロが100.1km以上で
・大都市近郊区間と、それに接続する連絡会社線相互の場合
は、有効1日、途中下車不可が反映されず、営業キロに応じた日数と途中下車が印字されてしまいます。
正確に発券するには券面を訂正するか、補充券で発売するか、あるいは東京〜上野間を新幹線経由にして大都市近郊区間を外すことになると思います。

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